一問一答

マニュアル作成業務は、その性格上、必要だけれども無くても何とかなる（と思っている社員が多い）のでなかなか優先順位が上がりません。また、せっかく時間をかけて、苦労しながら作ったとしても「使いにくい」と文句を言われたり、まったく使われなかったりという“後のこと”を想像すると、重い腰を上げる気にもなりにくいものです。

「どの部署がマニュアル作成を担うのか？」という問題は、企業が「うちは今後一切のマニュアルを作らない」と意思決定しない限り、永遠の解決しない問題です。「本部には時間がないので現場にマニュアルを作ってもらいたい」というロジックだと、現場にはマニュアル作る時間があるということになってしまいます。しかし、現場は、現場で人員にも、時間にも余裕がないという意識でいることが多いものです。

特に、飲食や小売、エステサロン等の店舗、ホテル等で日常のオペレーションを回しながら、マニュアルを作るのは容易ではありません。彼らからすれば、「本部の方がデスクで一日中パソコン仕事をしているのだからちょっとした空き時間で対処できるのでは？」と考えるでしょう。

「マニュアル作成はパソコンスキルの向上や自己成長に繋がる」や「現場の方が業務のポイントをわかっているのだから、本部よりもいいマニュアルが作れる」というロジックも、どこか詭弁に聞こえてしまいます。

なぜ現場はマニュアルを作ってくれないのでしょうか？
それは、本部が「マニュアル作成をやりたくない」「やりたくないとは言わないまでも、できれば避けたい」という考えが根本に透けて見えるからです。“ババ抜き”のジョーカーのような存在になっていて、それを押し付け合うような構図になってしまうとしたら、事はスムーズに進まないでしょう。

では、どうすれば現場も前向きに考えてくれるのでしょうか。それには、４つのポイントがあります。

1つ目は、「本部の心持ち」
まずは感謝の気持ちを示しましょう。“べき論”で現場のためを訴え続けるのではなく、本部が作成している企業も多数ある中で、“超”がつくほど忙しいにも関わらず、引き受けてくれて（場合によっては相談に乗ってくれて）ありがとうという気持ちで接することが大切です。そして、いざ引き受けてもらえることになったとしても、出来たマニュアルに高すぎる品質基準を持ち込んではいけません。文章作成力やPCスキルの拙さを指摘するのもご法度です。

2つ目は、「お膳立て」
現場メンバーのリテラシーと照らし合わせて、できる限り、簡単にマニュアルを作成できるツールを準備してあげましょう。その上で、ツールの使い方やマニュアルのつくり方に関するレクチャーも欠かせません。最初の数は、本部が作る、もしくは一緒に作るという姿勢も重要です。

3つ目は「伴走」
最初から現場メンバーに任せきりにせず、彼らによるマニュアル作成が軌道に乗るまでは、本部も一緒に汗をかきましょう。わからない時には相談に乗ったり、手伝ってあげたりしてください。

最後に「評価」と「インセンティブ」
マニュアル作成に対する貢献をしっかり評価し、できればインセンティブを与えたいところです。人事評価制度を作り直す必要はありません。「本部はしっかり見ているよ」というメッセージが伝わることが重要です。インセンティブがお金である必要もありません。社長や役員から朝礼や会議の場で、現場がマニュアル作成に貢献してくれている事実を感謝の言葉を添えて、伝えるだけでも立派な精神的インセンティブになるでしょう。

人間の辞書に、感じて動く「感動」という言葉はありますが、理屈で動く「理動」はありません。以上、４つのポイントを押さえ、現場に作成してもらう状況を整えた上で、マニュアル作成を打診してみてください。

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