動画マニュアル作成のコツ①文字の装飾は「ストレスフリー」を意識しよう
普段の私たちは、テレビやSNSなどで、字幕やテロップの入った動画をよく目にします。そうした字幕入り動画のイメージは世の中に広く浸透しており、仕事で動画マニュアルを作るときにも、「Youtubeに載っているような字幕入りの動画」を目指そうとする人が多い傾向にあります。
しかし、エンタメ向けのコンテンツであるSNS動画と、業務用の資料である動画マニュアルは、根本的に用途が異なるものです。文字の見せ方一つをとっても、両者の間には大きな違いがあります。その違いを正しく理解できていないと、「カラフルでオシャレな字幕」あるいは「絶妙な間でオチにつなげるテロップ」など、SNS動画によくある文字のイメージをそのまま動画マニュアルに持ち込んでしまい、作った本人は『質の良いマニュアルができた!』と満足しているものの、実際は作業の手順書として使い物にならない…というケースも起こり得ます。
そこで今回は、動画マニュアルの文字の見せ方について解説いたします。
1. 動画マニュアルは文字で決まる!見やすさの重要性
おそらく『動画の文字なんて、見やすくしたほうがいいに決まっている』と思われたことでしょう。文字が見づらければ、読んで理解するのに時間がかかることは、多くの方が感覚的に理解しているはずです。
しかし、文字の見づらい動画マニュアルを社内に共有したら、何が起こるかをリアルにイメージできる方は少ないのではないでしょうか。実は「スタッフがなかなか仕事を覚えられない」という単純な結果では終わらないのです。
上司・教育係から『これを見ておいてね』と共有された動画マニュアルの文字が見づらいと、最悪の場合、そのマニュアルを受け取った新人と会社との関係が冷え切ってしまう恐れがあります。
文字の見づらい動画マニュアルを何とか判読しなければいけない新人は、当然ストレスが溜まります。そのストレスはやがて『こんなマニュアルを押し付けるなんて、うちの会社は社員の立場を全然理解していない!』『うちの会社は、マニュアルが読みづらいという簡単な問題点にも気づけないの?』といった不信感に発展します。
大げさに思われるかもしれませんが、実際にある飲食系の企業でスタッフに動画マニュアルの利用状況についてアンケートを取ったところ、『見る気にならない・クオリティが低くて笑える』などの冷ややかなコメントが寄せられたこともあります。このように、業務マニュアルの不備が原因で、『会社の言うことなど聞く価値がない』という意識が根付いてしまう可能性すらあるのです。
2. 初心者でも簡単!文字を見やすくする“背景”の基本
動画内の文字を見やすくするには、どうすればよいでしょうか?
おそらく多くの方は「文字のサイズを大きくする」あるいは「文字の色を濃くする」ことで対処していると思われます。では、こうした対処法にはどれほどの効果があるのか、実際に確かめてみましょう。



これらの画像は、作業中の映像にそれぞれ「暗い色」「明るい色」「鮮やかな色」のやや大きめな文字で説明を挿入したものです。おそらく、いずれも何が書かれているかは読み取れると思いますが、背景と文字が混ざって見づらいと感じるかもしれません。背景に様々な物が映っていると、文字の境界が分かりづらくなってしまうのです。
では、次の画像のように加工するとどうでしょうか。

先ほどの例と比べて、文字のサイズを小さく、色を淡くしたにも関わらず、背景を真っ白にすることでハッキリと文字が見えるようになりました。このように、文字のサイズや色を調整するよりも、ゴチャゴチャとした背景に文字を直接重ねないように加工するほうが、文字を見やすくする上で効果的なのです。
3. 帯とフキダシがツボ!動画マニュアル文字の工夫
2.で例に示したように、文字に白い背景を重ねたものを動画の編集ツールで作ってみましょう。背景の形状には、大きく分けて帯とフキダシの2つがあります。
①帯

着物の帯のように細長い長方形の背景です。
一般的な動画マニュアルツールでは【図形】の描画機能が搭載されており、その中から四角形を選べば簡単に作成できます。
②フキダシ

マンガのセリフなどでおなじみの吹き出し型の背景です。
動画の編集ツールによって作り方が異なり、例えば『【図形】の一覧からフキダシを選ぶ』『2つの図形を重ねる』『【多角形】または【ペン】ツールで描画する』などの方法が一般的です。2番目の図形を重ねる方法の場合、例えば三角形や矢印の上に四角形を重ねることで作成可能です。また、3番目の多角形やペンツールは他の方法と比べて形を調整する手間がかかります。
「帯」と「フキダシ」の使い分け方としては、特に注目してほしい箇所をフキダシで指し示すことを基本にし、そのような箇所がない場合は帯を挿入すると良いでしょう。
4. メリハリを出す!文字装飾でニュアンスを伝えるコツ
動画内の文字を見やすく加工する方法について説明しました。さらにもう一歩踏み込んで、「文字装飾を使って直感的に分かりやすいマニュアルを作る」方法について解説しましょう。
まず、下の2つの画像を見比べてみてください。


個人の主観にもよりますが、おそらく多くの方は1枚目よりも2枚目の画像の配色のほうが自然であると感じるのではないでしょうか。
実は私たちは文字の色やサイズに対して、ニュアンスや重要さの違いを無意識に感じ取っているのです。上の画像の例では「緑色=安全・良い状態」「赤色=危険・悪い状態」という直感的な印象に沿っている2枚目の画像に自然さを感じます。(道路の交通標識も同様のルールに則って配色が決められています)
以下の表は文字の色・サイズに応じた使い分け方の参考例です。
サイズ
| 大 | 重要な説明、大まかなセクション |
|---|---|
| 中 | 普通の説明、細かいセクション |
| 小 | 補助的な説明 |
色
| 黒 | 普通の文章 |
|---|---|
| 赤 | NG、禁止事項 |
| オレンジ | 重要なポイント(禁止事項以外) |
| 緑 | OK(NGとの対比) |
| グレー | 条件に合致しないもの(普通の文、重要なポイントとの対比) |
このように、文字の色やサイズを変えるだけでもある程度のニュアンスを伝えることが可能です。また、動画マニュアルを社内に共有する上で「文字色が○○のときは、△△という意味」といった独自のルールを設けることも一定の効果があります。ただし、仕事の手順を覚える前に、動画マニュアルを見るときのルールを覚えなければいけないのは視聴者の負担になりますので、ルールを設定するのであれば簡潔かつ少なくなるように配慮しましょう。
絶対にやってはいけないことは、「配色のルールを設けていないのに、意味もなくカラフルに彩ってしまうこと」です。これは動画マニュアルの作成に慣れていない初心者(特に『動画の編集って楽しそう!』と目をキラキラさせてしまうタイプ)がやりがちなミスですので、気を付けましょう。
5. プロ直伝!動画マニュアルに役立つ文字表現のまとめ
動画内の文字装飾について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
ユーザーが興味のあるコンテンツを自由に選んで視聴するエンタメ動画と違って、動画マニュアルは社員が仕事を覚える際に必ず見るよう会社から命じられるものです。『何が書かれているのか分かりづらい』『何を言いたいのか分かりづらい』ような動画から内容を正確に理解することを強いられるのは、社員にとってストレス以外の何物でもありません。
「帯」「フキダシ」を活用して動画内の文字を見やすく加工し、かつ動画マニュアルの内容がすんなりと頭に入るように「文字の色やサイズ」を工夫することで、社員がストレスを感じることなく業務を習得できる環境を整えましょう。
